森美術館「ルイーズ・ブルジョワ展」 ― 2024年12月17日 07時36分39秒
六本木ヒルズの森美術館で開催されている「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」に行ってきました。長いタイトルです。
ルイーズ・ブルジョワは、六本木ヒルズのエントランス「66プラザ」にパブリックアートとして常設展示されている、《ママン》という大きな蜘蛛(クモ)のオブジェの作者です。
ルイーズ・ブルジョワ 《ママン》 2002年(1999年) ブロンズ、ステンレス、大理石 9.27 x 8.91 x 10.23 (高さ) m
ママンとは、フランス語で「お母さん」。
《ママン》は、ルイーズ・ブルジョアが45歳の頃、最初にインクと木炭で描いた蜘蛛のテーマから続くものです。蜘蛛は母親の仕事であった紡績、織り、養育、保護の全てを持つ、母親の強さを暗示しているといいます。母親は、ルイーズ21歳の頃に亡くなりました。
か細い足ですべてを支える《ママン》のお腹には、大理石で作られた卵をたくさん抱えています。
夜になると六本木ヒルズのイルミネーションの中で存在感を示しています。
《ママン》の作品はさまざまなバリエーションがあり、世界各地で展示されています。
「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」チラシです。
ルイーズ・ブルジョワ(Louise Bourgeois, 1911年12月 - 2010年5月)は、フランス・パリ郊外でタペストリーの修復工房を営む両親のもとに生まれ、アメリカ合衆国で活躍したインスタレーションアートの彫刻家であり、画家、版画家です。
70年にわたるキャリアの中で、自身が幼少期に経験した、複雑で、ときにトラウマ的な出来事をインスピレーションの源として、インスタレーション、彫刻、ドローイング、絵画など、さまざまなメディアを用いながら、男性と女性、受動と能動、具象と抽象、意識と無意識といった二項対立に潜む緊張関係を探求しました。
I HAVE BEEN TO HELL AND BACK. AND LET ME TELL YOU, IT WAS WONDERFUL.
(地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ)
ルイーズ・ブルジョワ 《無題(地獄から帰ってきたところ)》 1996年 刺繍、ハンカチ 49.5×45.7 cm 個人蔵(ニューヨーク)
本展は、
『第1章 私を見捨てないで』 では母との関係、
『第2章 地獄から帰ってきたところ』 では父との確執、
『第3章 青空の修復』 では、壊れた人間関係の修復と心の解放
を主なテーマに、ルイーズ・ブルジョワの創造の源であった家族との関係をもとにした、3つの章から構成されていす。
大きく不気味な蜘蛛が、敵や獲物に向かって今にも襲いかかろうと低い姿勢で構えています。
子供を守る保護者でもあり、愛情にあふれた「母」も、時にはわが子を脅かし、不安にさせてしまうことがあります。ルイーズ・ブルジョワは、全ての事柄には相反する2つの意味が内在すると考えていました。
ルイーズ・ブルジョワ 《かまえる蜘蛛》 2003年 ブロンズ、茶色く磨かれたパティナ、ステン レス鋼 270.5×835.7×627.4 cm 所蔵:イーストン財団(ニューヨーク)
蜘蛛は腹部にナイロン・ストッキングに包まれた3つのガラスの卵を抱え、檻のような部屋を守るように長い脚を広げています。部屋にはルイーズの身の回りの品々が並べられています。
ルイーズ・ブルジョワ 《蜘蛛》 1997年 鋼、タペストリー、木、ガラス、布、ゴム、銀、金、骨 449.6×665.5×518.2 cm 所蔵:イーストン財団(ニューヨーク)
ピンク色の人形から垂らされた5本の白い糸。ルイーズは両親と兄弟で5人、自身の夫と子供たちとの家族5人と、5という数字は家族を表しているようです。ルイーズは、乳房がモチーフとなった作品を多く残しています。自身にも授乳をしているということは、自分も守ってもらいたいという願望でしょうか。
ルイーズ・ブルジョワ 《良い母》 2003年 布、糸、ステンレス鋼 彫刻とスタンド:109.2×45.7×38.1 cm 所蔵:イーストン財団(ニューヨーク)
「カップル」はルイーズにとって重要な主題の一つです。愛情や性的関心、誘惑、わだかまり、依存することの恐れと大切な人を失うことへの恐怖。様々な感情がこの作品に込められています。
ルイーズ・ブルジョワ 《カップル》 2003年 アルミニウム 365.1×200×109.9 cm 個人蔵(ニューヨーク)
このブロンズ像は19世紀フランスの精神科医ジャン=マルタン・シャルコーが研究対象としたヒステリーを題材としています。男性をモデルにすることにより、ヒステリーを起こすのは女性のみであるという固定観念を覆します。
ルイーズ・ブルジョワ 《ヒステリーのアーチ》 1993年 ブロンズ、磨かれたパティナ 83.8×101.6×58.4 cm 所蔵:イーストン財団(ニューヨーク)
展示風景
真っ赤に照らされた洞窟のような部屋で、テーブルのような台の上に肉片や内臓を思わせる断片が散らばっています。幼い時にいだいた、憎い父親を切り刻んで食すという幻想を形にした作品だといわれます。
ルイーズ・ブルジョワ 《父の破壊》 1974年 アーカイバル・ポリウレタン樹脂、木、布、照明 237.8×362.3×248.6 cm 所蔵:グレンストーン美術館(米国)
展示風景
ルイーズ・ブルジョワ 《家族》 2007年 グワッシュ、紙 59.7×45.7 cm(各、24点組) 個人蔵(ニューヨーク)
片足で松葉杖をつく少女の腕や頭部から生えた枝に、ビーズの青い房が実り、女性らしさと豊穣の花を咲かせています。トラウマを昇華させ作品を作り続けたルイーズ・ブルジョワ自身を表しているような作品です。
トピアリーとは、樹木を刈り込んで造形する庭園技法をいいます。
ルイーズ・ブルジョワ 《トピアリーIV》 1999年 鋼、布、ビーズ、木 68.6×53.3×43.2 cm 個人蔵(ニューヨーク)
図録は表紙カバーが2種類あり、右《トピアリーIV》は会場限定販売です。
中は同じで、下の写真はカバーを外したものです。
サイズ:A4判(28.2×21cm) ページ数:320ページ 言語:日英バイリンガル 価格:3,740円(税込)
「ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ」開催概要
開催期間:2024年9月25日(水)~ 2025年1月19日(日)
休館日:会期中無休
開館時間:10:00~22:00 火曜日のみ17:00まで (ただし、12.24(火)・12.31(火)は22:00まで)
※最終入館は閉館時間の30分前まで
観覧料金:本展は、事前予約制(日時指定券)を導入しています。専用オンラインサイトから「日時指定券」をご購入ください。(空きがある場合のみ当日販売あり)
オンライン販売と当日会場販売、平日と土・日・休日でそれぞれ料金が違います。詳細は専用オンラインサイトをご覧ください。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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