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百段階段の吉祥モチーフ2021年02月01日 10時43分20秒

ホテル雅叙園東京(旧:目黒雅叙園)で「初春の文化財見学 百段階段の百の縁起もの」というイベントが開催されています。

この企画は、250枚の日本画と建築意匠に囲まれた百段階段の絢爛豪華な装飾の中から、健康や長寿、富貴といった縁起もの(吉祥)に関わる意味や願いを込めて制作されたものを100点選び出して紹介するというものです。

※ 吉祥模様の打掛 (1月20日)
※ エレベーターの唐獅子牡丹 (1月21日)
※ 一富士二鷹三茄子 (1月22日)
※ 松・竹・梅 (1月23日)
※ 吉祥に関わる「植物」 (1月25日)
※ 吉祥に関わる「鳥や動物など」 (1月26日)
とアップして来たので、今日は建築意匠から吉祥モチーフを探してみました。

「草丘の間」から見える「十畝の間」の屋根の「懸漁(けぎょ)」です。
「懸漁」とは神社やお寺の屋根の破風(はふ)部に取り付けられる装飾板ですが、木造の建築物を火から守るための火伏せのまじないの意味も持ちます。水に関係するものを装飾木彫りとし、ここでは蓮(ハス)の花が採用されています。

「草丘の間」の廊下の高欄(こうらん)には鯉が彫られています。中国には鯉は龍になるとの伝説があり、出世魚として尊ばれています。

窓などの格子を補強するために四隅につける板を「隅板(すみいた)」といいます。
小さな縁起ものですが、末広がりの扇型になっています。

「隅板」は装飾としても大きな意味を持ちます。
一つひとつをよく見ると、羽を広げた蝙蝠(コウモリ)の形になっています。
西洋では不吉なイメージの強い蝙蝠ですが、中国では幸運を招くとされ、吉祥モチーフとして採用されてきたといいます。

厳寒に耐える常緑樹であり、竹、梅とともに「歳寒三友(さいかんさんゆう)」とも呼ばれる吉祥画材の「松」のデザインが隅板になっています。

「清方の間」です。写真左の隅板は「桜の花びら」を模しています。
新型コロナウィルス感染防止対策として障子が開けられていますが、障子を締め切ると、厄除けの意味を持つ「松皮菱(まつかわひし)」が表れます。

組子「変わり麻の葉」です。
古来より仏像の装飾などに使われてきた六角形の幾何学模様です。
麻は成長が早くまっすぐに伸びることから、健やかな成長と魔よけの意味を込め、産着などにも用いられてきました。

「十畝の間」の組子障子です。上の方、長押(なげし)は黒漆研ぎ出しという螺鈿細工で装飾されています。
組子はこちらも「麻の葉」がデザインされています。

障子の下の部分、幾何学模様のように見えるこの模様は「卍(まんじ)」を表しています。
「卍」は、インドのヴィシュヌ神の胸の旋毛(つむじ)を起源とする瑞兆の相とされています。

「清方の間」入口には組子で富士山が描かれています。

「草丘の間」入口は横長の楕円が二つ繋がる、瓢箪(ひょうたん)を模した組子になっています。
蔦が盛んに伸び、そこから鈴なりに実が生る瓢箪は子孫繁栄の象徴でもありました。

「草丘の間」、升つなぎの組子障子です。
無病息災や子孫繁栄の願いが込められ、「ますます」繁栄につながるともいわれています。

「静水の間」の組子障子は「胡麻柄亀甲(ごまがらきっこう)」です。
胡麻の実は栄養豊富であることから不老長寿や健康祈願を意味します。亀甲は亀の甲羅を表す吉祥模様です。亀は鶴と共に長寿の象徴として知られています。

「静水の間」には超絶技巧で作られた組子が並びます。これは右上と左下で模様が異なる複雑な技術です。
右上は「二重麻の葉」、左下は「俵亀甲(たわらきっこう)」です。成長と魔除けの願いが込められた麻の葉と、長寿吉祥の象徴、亀甲が表わされています。

「草丘の間」の床柱で使われている「槐(えんじゅ)」の木です。
昔の中国では官位が上がると庭に槐を植え、その数が出世のステータスシンボルとされていたといいます。日本では魔除けとしてこの木でお面を作る風習が残っており、また、「延寿(えんじゅ)」に通じることから長寿を意味するおめでたい木とされています。

「十畝の間」です。天袋や地袋の引手を見ると、菊の形になっています。
菊は長寿の象徴の花で、日本では天皇・皇后や国の機関の紋として菊の紋が使われています。

「清方の間」の天袋と地袋には瓢箪型の引手が使われています。
瓢箪は子孫の長久を願う吉祥モチーフです。こんな所にも職人たちの粋な遊び心を垣間見ることができます。


「漁礁の間」の床の間の下部、床框(とこがまち)には「雷紋」が描かれています。
雷紋は稲妻の象徴とされています。、雷雨は万物を潤すもとであり、なたその形は絶えることなく長く続く様子を表すことから吉祥模様とされています。
また、畳縁には同じ大きさの円を重ねて繋いだ文様、「七宝繋ぎ」が描かれています。

「星光の間」の床の間の畳縁にある模様は「大紋高麗縁(だいもんこうらいべり)」という、雲形や菊が織り出された縁です。
過去には親王や大臣は大紋高麗縁、公家は小文高麗縁と定められていたということです。

ホテル雅叙園東京・百段階段にある建築意匠から吉祥モチーフを集めてみました。 
「初春の文化財見学 百段階段の百の縁起もの」では、これら「吉祥」に関わる絵画や建築意匠を100点選び、やさしい解説付きで案内しています。


開催会場:ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財 「百段階段」
開催期間:2021年1月1日(金・祝) - 3月14日(日)
休館日:2月1日(月) ※展示替えのため
  ※1月1日~31日までは打掛を、2月2日~3月14日までは桃の節句の装飾を展示
開催時間:12:30~18:00(最終入館17:30)
観覧料金:一般 ¥1,000 学生 ¥500 (要学生証呈示) 未就学児無料



最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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