「岡本太郎に挑む 淺井裕介・福田美蘭」展 ― 2024年12月29日 18時44分41秒
川崎市岡本太郎美術館で開催されている「岡本太郎に挑む 淺井裕介・福田美蘭」展に行ってきました。
屋外には高さ30mの《母の塔》や、《樹霊Ⅰ》などの立体作品が展示されています。
岡本太郎 《母の塔》 1971年原型制作 全高30m 鉄骨造 外殻 GRCクラッシュパネル仕上 クラッシュタイル(スコルト加工) 人形彫刻 FRPブロンズ仕上 16体 H=3.0~5.6m
岡本太郎 《 樹霊Ⅰ 》 1970年/97年再制作 ブロンズ
本展は川崎市市制100周年と開館25周年を記念して開催されているもので、 淺井裕介と福⽥美蘭の2⼈の現代作家による、岡本太郎をオマージュした展覧会です。
エントランスに置かれているのは、《太陽の鐘》 1966年 繊維強化プラスティック(FRP.)。
今回展示されている岡本太郎作品は、基本的に淺井裕介と福⽥美蘭によって選ばれたものです。
会場入口では、真っ赤な太陽の顔が出迎えてくれます。
展示風景
福田美蘭(ふくだ みらん、1963年2月6日 - )は、東京都世田谷区出身。父親は大阪万博(1970年)のポスターやピクトグラムなども手掛けているグラフィックデザイナーの福田繁雄です。
聖心女子学院初等科・中等科・高等科卒業後、東京芸術大学美術学部絵画科油画専攻卒業から、東京芸術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻油画を修了しています。
名画にデジタル加工するなど、様々なアーティストのオマージュ的な作品や、芸術や⽂化、現代社会への批評的まなざしを可視化した作品で有名です。
福田美蘭の展示作品は、全てが本展の為に制作された新作です。
大阪万博が開催された時、福田美蘭は小学校1年生。父親の部屋にあった太陽の塔の置物を、来館者が自由に押せる「スタンプ」にしてしまいました。
1枚押してみました。「芸術は爆発だ」
私が岡本太郎の絵画の中で一番好きな作品、《夜》です。
背中に刃物を隠す少女の姿は、当時の旧態依然とした画壇に対する岡本太郎の心情を表しています。
岡本太郎と評論家の花田清輝が発起人となり1948年に発足した、総合芸術運動を掲げる「夜の会」という研究会は、この作品のタイトルが会の名の由来になっています。
岡本太郎 《夜》 1947年 キャンバス、油彩
福田美蘭はより可視化し、少女を取り囲む光る枝を「龍」の顔にしてしまいました。面白い発想です。
福田美蘭 《夜》 2024年 パネル、アクリル絵具
岡本太郎の持ち味である、ユーモラスでありながら森のように深い意味を持つ作品、《森の掟》。
岡本太郎 《森の掟》 1950年 キャンバス、油彩
岡本太郎が「権力」として表した赤い怪獣のチャックで閉じられた大きなお腹を、福田美蘭はいとも簡単に開いてしまいました。
福田美蘭 《森の掟》 2024年 パネル、アクリル絵具
会場を歩いていると何やら視線を感じます。人間は不思議なもので、たとえ後ろ向きであっても視線というものは感じ取れるものです。
岡本太郎は多くの《眼》の絵画を描きました。岡本太郎の《眼》をテーマにした作品を壁一面に並べ、「鳥よけ目玉風船」の大きな「眼」が鑑賞者を威嚇してきます。
福田美蘭 《眼の絵画》 2024年 岡本太郎作品(キャンバス、油彩)17点 鳥よけバルーン(ビニール)21点
福田美蘭さんの作品はこのほかにも岡本の《戦士》という立体作品を「輪投げ」にしてしまうなど、観ていてクスッと笑ってしまうものが多く、全てを紹介したいのですがそうもいきません。可能な方は会場でご覧ください。
淺井裕介(あさい ゆうすけ、1981年3月3日 - )は、東京都出身。神奈川県立上矢部高等学校普通科美術陶芸コース卒業。卒業後も制作環境を求めて4年間高校に通い続けたといいます。
抽象画、陶芸、様々な素材を使ったドローイング、巨大壁画、マスキングプラント、泥絵など、多方面で精力的な活動をしている現代美術家です。
土、水、小⻨粉、テープ、ペンなどの身近な素材によって、あらゆる生物の根源を想起させるような神話的世界を描く淺井裕介は、本展のために川崎市内で採取した土などをを絵具にして、巨大な新作を制作しました。
淺井裕介 《星、飛ビ散ル》 2024年 アルミパネルに土、アクリルレジン
展示風景
第五福竜丸が被爆した際の水爆の炸裂の瞬間がモチーフとなった《明日の神話》。渋谷駅の連絡通路に展示されている、岡本太郎の巨大壁画《明日の神話》の下絵です。
《明日の神話》と対置させた淺井裕介の新作《在処》は地元の川崎の土を中心に、これまでに淺井が訪れた様々な土地の土、弁柄、炭などすべて自然の色で作られています。
《在処》は、靴を(できれば靴下も)脱いで作品の上を歩くことが出来ます。作品に乗って作品を観るという新しい感覚と、土など自然の材料で描かれた作品の感触で自然を体感することが出来ます。
岡本太郎 《明日の神話》 1968年 キャンバス、油彩
淺井裕介 《在処》 2024年 アルミパネルにポリ塩化ビニール、土、弁柄、炭、アクリルレジン
淺井裕介は北海道や石巻を訪れて、食猟師と共に動物との命の駆け引きを経験しました。
赤い鹿の血や動物性タンパク質から作られる青い絵具「プルシアンブルー」を使った新作を制作しています。
淺井裕介
左) 《組み合わせの魔法》 2024年 キャンバス、蝦夷鹿の血とレバーから作られたプルシアンブルー
中) 《命の手触り2》 2024年 日本鹿の羊皮紙、蝦夷鹿の血とレバーから作られたプルシアンブルー
右) 《命の手触り1》 2024年 屋久鹿の羊皮紙、屋久島の土、炭、弁柄、アクリル、アクリルレジン
図録はB5判 88ページで、税込1500円でした。
本展は、絵画・彫刻・⼯芸・デザインなど、既存の枠組みを超えて活躍した岡本太郎の表現・思想の多⾯性を、 世代や表現⽅法の異なる2⼈の現代作家の視点で⾒直すことが出来る、興味深い展覧会になっています。
「岡本太郎に挑む 淺井裕介・福田美蘭」展 開催概要
開催会場:川崎市岡本太郎美術館
開催期間:2024年10月12日(土)~2025年1月13日(月)
休館日:月曜日(1月13日を除く) 12月29日(日)~1月3日(金)
開館時間:9:30-17:00(入館16:30まで)
観覧料金:一般1,000円、高・大学生・65歳以上800円、中学生以下は無料
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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