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六本木アートナイト 鴻池朋子・皮トンビ2023年05月27日 20時38分40秒

5月27日(土)から28日(日)にかけて、「六本木アートナイト2023」が開催されています。
六本木アートナイトは街全体を美術館に見立て、夜を徹してアートを楽しむ一夜限りのイベントです。
今年のテーマは「都市のいきもの図鑑」。
メインプログラム・アーティストとして、鴻池朋子さんの作品が六本木の街にやってきました。

鴻池朋子(こうのいけ ともこ)は、1960年秋田県生まれで、1985年に東京芸術大学美術学部 絵画科 日本画専攻を卒業しました。 玩具会社での企画デザインや、インテリア雑貨店の企画室に勤めて雑貨や家具のデザインを手がけたのち、1998年より絵画、彫刻、パフォーマンス、アニメーション、絵本などの様々なメディアを用いて、現代の神話(動物が言語を獲得するまでの物語)を、地形や場とのサイトスペシフィック( Site-specific 特定の場所でその特性を活かして制作する表現 )なトータルインスタレーションで表現し、人間学/動物学、おとぎ話、考古学、民俗学などと学際的に対話を重ねて、エネルギーと芸術の問い直しを試みている美術家です。

国立新美術館の建物の前には《狼ベンチ》がいました。
国立新美術館の館内各所に、多くの鴻池朋子作品が展示されています。(観覧は無料です)

鴻池朋子 《狼ベンチ》
鴻池朋子 狼ベンチ
日本の狼信仰や、世界各地の神話や宗教に登場する「狼」は、鴻池作品の中で多く取り上げられています。
この作品はベンチになっていて、自由に座ることができます。当然、撫でまわすことも・・・
鴻池朋子 狼ベンチ
向こうの建物は、黒川紀章設計の国立新美術館です。
鴻池朋子 狼ベンチ

鴻池朋子 《陸にあがる》
鴻池朋子 陸にあがる
大鹿の雄々しい角と艶めかしい女性の足が滑らかに接続されています。
最初のバージョンは能登半島最北端の崖、海と陸の境目に設置されました。海で生まれた生物が、陸にあがるという進化の長いプロセスを連想することができます。


鴻池朋子 《アースベイビー》
鴻池朋子 アースベイビー
生まれたばかりの赤ん坊の顔には、光を追い求める人間の原始的な感覚と緊張がみなぎります。
近年鴻池朋子は、害獣として駆除されたさまざまな動物の毛皮を展示に使っています。下に置かれた狼の毛皮は、モンゴルで20年以上前に害獣駆除されたものです。
狼の毛皮

鴻池朋子が2014年から国内外で続けてきた、手芸を中核としたプロジェクトのひとつ、《物語るテーブルランナー》が館内各所、各フロアに展示されています。 向こうに見えるのは《皮トンビ》です。
鴻池朋子 物語るテーブルランナー

鴻池朋子 《武蔵野皮トンビ》 牛皮、水性塗料、クレヨン
鴻池朋子 皮トンビ
埼玉県所沢市にある「角川武蔵野ミュージアム」の建物壁面に展示された《武蔵野皮トンビ》が六本木にやってきました。
鴻池朋子 皮トンビ
商品化されずに切れ端として捨てられる運命だった皮を用いて創られています。「武蔵野ミュージアム」の壁面で風雨と陽光によって色や形を変えてきたトンビは、自然は時と共に変化することを観る者に教えてくれます。
鴻池朋子 皮トンビ

鴻池朋子 皮トンビ

鴻池朋子 皮トンビ

鴻池朋子 皮トンビ

「東京ミッドタウン」のガレリアに展示された《大島皮トンビ》です。
鴻池朋子 皮トンビ
「瀬戶内国際芸術祭2019」で、2019年6月から2020年2月まで香川県高松市の離島、大島に展示された《 皮トンビ 》。 大島にある国立ハンセン病療養所の裏山で長く閉ざされていた山道を切り開いて設置されました。
その後、東京都中央区にある「アーティゾン美術館」で開催された「鴻池朋子 ちゅうがえり Tomoko Konoike FLIP」でも展示されています。
鴻池朋子 皮トンビ

鴻池朋子 皮トンビ

《大島皮トンビ》の横に並んで《高松→越前→静岡→六本木皮トンビ》も展示されています。
鴻池朋子 皮トンビ
各地の美術イベントを巡回して展示されてきた作品です。
静岡県立美術館で開催されたみる誕生 鴻池朋子展」でも、美術館の裏山に展示されていました。
鴻池朋子 皮トンビ

鴻池朋子 皮トンビ

鴻池朋子 皮トンビ

六本木アートナイト2023」は基本的に今日・明日限りのイベントです。
この展示は28日(日)18時まで。



最後までご覧いただき、ありがとうございました。

ジョルジュ・ルオー かたち、色、ハーモニー2023年05月19日 18時04分33秒

2003年4月に開館して今年20周年を迎えたパナソニック汐留美術館で、開館20周年記念展「ジョルジュ・ルオー かたち、色、ハーモニー」が開催されています。
ジョルジュ・ルオー ― かたち、色、ハーモニー ―

当館は、松下電工(現パナソニック)が1990年代から収集したジョルジュ・ルオーの作品を約200点所蔵しています。
本展では、パリのポンピドゥー・センターから、ルオーの傑作13点が来日するほか、絵画の他にも手紙やルオーの詩など、フランスや国内の美術館から集結した本邦初公開作品を含む約70点が展示されています。
ジョルジュ・ルオー ― かたち、色、ハーモニー ―
ルオーが、自身の芸術を語るのに繰り返し用いたことば 「かたち、色、ハーモニー」 をキーワードに、ルオーの装飾的な造形の魅力に迫ります。
ジョルジュ・ルオー(Georges Rouault, 1871年5月27日 - 1958年2月13日)は、フォーヴィスム(野獣派)の中心人物として知られる、フランスの画家です。フォービズムに分類されることが多いのですが、本人は「画壇」や「流派」とは一線を画し、ひたすら自己の芸術を追求し、革新的な作品を残しています。
宗教的主題や、晩年の輝くような色彩で描かれた油彩、デフォルメされた親しみやすい人物像は、多くの人を魅了し続けています。
本展は、
Ⅰ 国立美術学校時代の作品:古典絵画の研究とサロンへの挑戦
Ⅱ 裸婦と水浴図:独自のスタイルを追い求めて
Ⅲ サーカスと裁判官:装飾的コンポジションの探求
Ⅳ 二つの大戦:人間の苦悩と希望
Ⅴ 旅路の果て:装飾的コンポジションへの到達
の5つの章で構成されています。


ジョルジュ・ルオー 《クマエの巫女》 1947年  油彩/紙(格子状の桟の付いた板で裏打ち)  53.0 × 37.7 cm  パナソニック汐留美術館
パナソニック汐留美術館の新収蔵作品です。予言の力を与えられたクマエの巫女を、温かな色味の花束を手に、清らかな瑞々しい姿で描いています。

展示風景
ジョルジュ・ルオー ― かたち、色、ハーモニー ―


ジョルジュ・ルオー 《大木のある風景》  1946年頃  油彩、カンヴァス  70.0 × 31.5cm ポンピドゥー・センター、パリ/国立近代美術館
1920年代、ルオーは幻想的な風景の中に聖なる人物を描き込む、「聖書風景」又は「伝説的風景」と呼ばれる独自の主題の風景画を描き始めます。本作は画面に木や人物(キリストと母子)、印象的な塔、月といったこの主題にたびたび登場する重要なモティーフが独特な配色とリズミカルな構図で描かれている、「伝説的風景」の完成形態ともいえる作品です。


展示風景  左:《受難(エッケ・ホモ)》 右隣:《かわいい魔術使いの女》 共にポンピドゥー・センター、パリ/国立近代美術館蔵
ジョルジュ・ルオー ― かたち、色、ハーモニー ―

ジョルジュ・ルオー 《かわいい魔術使いの女》  1949年 油彩/カンヴァス(格子状の桟の付いた板で裏打ち) 88.0 × 72.0cm ポンピドゥー・センター、パリ/国立近代美術館
装飾的な半円アーチ、女性の装飾具、垂れ下がった布、建物、太陽、静物など、画面に律動を与えるモティーフが、赤を主体とする暖色系の鮮やかな色彩と黒く太い輪郭線で描かれ、ルオーの装飾的コンポジションの至高の表現をみることができます。


図録は230×185㎜とちょっと小さめ(B5変形)で、185ページ、税込2,500円です。


開催期間:2023年4月8日(土)~6月25日(日)
休館日:水曜日 ※5月3日、6月21日は開館
開館時間:午前10時~午後6時 ※入館は午後5時30分まで
  ※5月12日(金)、6月2日(金)、6月23日(金)、6月24日(土)は午後8時まで開館 (入館は午後7時30分まで)
  ※混雑緩和のため、土曜・日曜・祝日は日時指定予約にご協力をお願いします
観覧料金:一般:1,200円、65歳以上:1,100円、大学生・高校生:700円、中学生以下:無料
  ※障がい者手帳をご提示の方、および付添者1名まで無料



最後までご覧いただき、ありがとうございました。

モネの部屋@国立西洋美術館2023年05月14日 14時20分09秒

国立西洋美術館は、本館が「ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献-」の構成資産として世界文化遺産に登録されたことで話題になった美術館です。国重要文化財にも指定されています。
国立西洋美術館

印象派などの19世紀から20世紀前半の絵画・彫刻を中心とする松方コレクションを軸として、中世末期・ルネサンス期以降、20世紀初頭までの西洋絵画・彫刻作品など、幅広い年代の美術品を常設展示しています。なかでも西洋の18世紀以前の画家たちの作品を見ることができる美術館として、日本有数の存在となっています。
印象派から20世紀前半くらいまでの日本人好みの作品が充実していて、印象派以前の宗教画やロココ美術などの美しい絵画と合わせて観ると、とても癒されます。

常設展だけなら一般500円/大学生250円で観覧出来、高校生以下と65歳以上は無料になります。(その他にも障がい者手帳をお持ちの方など、無料対象があります)
私は「65歳以上無料」で入れて、無料の人は日時指定の予約も必要ないので、上野に行った帰りがけに時間があるとふらっと立ち寄っています。

常設展だけでも12の展示室と屋外展示があって、全部を見ると2時間以上かかってしまうので、いくつかの部屋をメインにして、他の部屋はさらっと流していきます。

今回は、モネの作品を集めて展示した部屋があるので、そこを中心に観ていきました。

展示風景
手前(右)の作品は、クロード・モネ 《舟遊び》 1887年 油彩、カンヴァス 145.5 x 133.5cm 松方コレクション
モネの部屋@国立西洋美術館
ジヴェルニーに住むモネはこの地で、自宅近くを流れるセーヌ川の支流エプト川で舟遊びを楽しむ家族の情景を何度も描いています。。舟遊びは当時人気の休日の娯楽でした。


クロード・モネ 《陽を浴びるポプラ並木》 1891年 油彩、カンヴァス 93 x 73.5cm 松方コレクション
ジヴェルニーにほど近いエプト川左岸のポプラ並木はモネを魅了し、1891年の春から夏にかけて幾度もその姿を画布に描いています。


クロード・モネ 《雪のアルジャントゥイユ》 1875年 油彩、カンヴァス 55.5 x 65cm 松方コレクション
セーヌ河沿いの町アルジャントゥイユは、日曜ともなればボート遊びの行楽客が集う典型的なパリの近郊都市でした。モネは1871年から78年まで、この地に滞在していました。


クロード・モネ 《睡蓮》 1916年 油彩、カンヴァス 200.5 x 201cm 松方コレクション
の手前に
オーギュスト・ロダン 《化粧するヴィーナス》 1890年頃 ブロンズ 47 x 27 x 21cm 松方コレクション
が展示されています。
モネの部屋@国立西洋美術館
50歳を超えたモネは、ジヴェルニーの自宅で庭園造りを始めました。樹木や花を植え、池には睡蓮が育てられ、モネはそれを繰り返し描くようになります。


クロード・モネ 《ウォータールー橋、ロンドン 》 1902年 油彩、カンヴァス 65.7 x 100.5cm 松方コレクション
ウォータールー橋は、イギリス、ロンドンのテムズ川に架かる橋です。モネは1871年以来、ロンドンを数度にわたって訪れています。僅かに赤味を帯びた色彩で描かれ、ロンドン特有の霧の中に橋が浮かびあがります。水面に反映する橋の光がモネ独特のタッチで揺らぎます。


国立西洋美術館・常設展 開催概要
開催会場:国立西洋美術館 本館・新館
開催期間:常設(展示替えあり)
休館日:原則として毎週月曜日
  ※ただし、月曜日が祝日又は祝日の振替休日となる場合は開館し、翌平日が休館
  ※年末年始(12月28日~1月1日)は休館
開室時間:9:30~17:30  金曜・土曜日は9:30~20:00 ※入室は閉室の30分前まで
無料観覧日:国際博物館の日(5月18日)、文化の日(11月3日) ※常設展のみ無料
  ※国立西洋美術館と川崎重工業株式会社は、2023年3月17日、パートナーシップ契約を締結しました。本パートナーシップによる事業として、川崎重工の提供により、2023年4月以降の原則毎月第2日曜日を「Kawasaki Free Sunday」として常設展無料観覧日にしています。
観覧料金:一般500円 / 大学生250円
  ※高校生以下及び18歳未満、65歳以上、心身に障害のある方及び付添者1名は無料 (いずれも要証明)
  ※企画展は別料金となります。また、企画展の観覧券で常設展も観覧できます。

6月11日(日)まで企画展「憧憬の地 ブルターニュ ―モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷」が開催されています。

近くにお住まいの65歳以上あるいは高校生以下の方は、散歩がてらに寄ってみてはいかがでしょうか。美術館は作品保護のために室温を低めに設定しているので、これから迎える暑い夏は冷房が効いていて心地良く過ごせます。



最後までご覧いただき、ありがとうございました。

東京都美術館「マティス展 Henri Matisse: The Path to Color」2023年05月04日 16時22分39秒

上野の東京都美術館で、「マティス展 Henri Matisse: The Path to Color」が開催されています。
東京都美術館「マティス展 Henri Matisse: The Path to Color」
アンリ・マティス(Henri Matisse, 1869年12月31日 - 1954年11月3日)は、フランス生まれの画家です。
原色を多用した強烈な色彩と、激しいタッチを特徴とするフォーヴィスム(野獣派)の中心人物として、目に映る色彩ではなく、心が感じる明るい強烈な色彩でのびのびとした雰囲気を創造しました。
東京都美術館「マティス展 Henri Matisse: The Path to Color」

世界最大規模のマティス・コレクションを所蔵するポンピドゥー・センターの全面的な協力を得て開催する本展は、絵画に加えて、彫刻、ドローイング、版画、切り紙絵、晩年の最大の傑作であり、マティス自身がその生涯の創作の集大成とみなした南仏ヴァンスのロザリオ礼拝堂に関する資料まで、各時代の代表的な作品によって多角的にその仕事を紹介しながら、豊かな光と色に満ちた巨匠の造形的な冒険を辿っています。

1章 フォーヴィスムに向かって 1895–1909
2章 ラディカルな探求の時代 1914–1918
3章 並行する探求─彫刻と絵画 1913–1930
4章 人物画と室内画 1918–1929
5章 広がりと実験 1930–1937
6章 ニースからヴァンスへ 1938–1948
7章 切り紙絵と最晩年の作品 1931-1954
8章 ヴァンス・ロザリオ礼拝堂 1948–1951
の8つの章で構成されています。

1941年以降マティスはドローイングに打ち込み、独自の方法を編み出しています。17組158点のドローイングを1冊にまとめ、詩人ルイ・アラゴンの序文を付して出版された作品集です。
アンリ・マティス 《デッサン主題と変奏》(パリ、マルタン・ファビアーニ刊) 1943年 書籍 ポンピドー・センター / 国立近代美術館・CCI / カンディンスキー図書館蔵

マティスは画家としての生涯にわたって、多くの自画像を描いています。展示会場内からマティスの自画像を集めてみました。それぞれ、1910年代、20年代、30年代、40年代に描かれたものです。
アンリ・マティス 《パイプをくわえた自画像》 1919年 墨、厚紙に貼った紙 ポンピドー・センター / 国立近代美術館(フランス)蔵 ブザンソン美術考古学博物館寄託 アデル&ジョルジュ・ベッソン寄贈1963年

アンリ・マティス 《自画像》 1927年 グラファイト、紙 ポンピドー・センター / 国立近代美術館(フランス)蔵 マリー・マティス寄贈1984年

アンリ・マティス 《自画像》 1937年 木炭、簣の目紙で裏打ちした紙 ポンピドー・センター / 国立近代美術館(フランス)蔵 購入1984年

アンリ・マティス 《麦わら帽子をかぶった自画像》 1945年 インク、紙 ポンピドー・センター / 国立近代美術館(フランス)蔵 購入1984年

アトリエの助手でもあったモデルのリディア・デレクトルスカヤを描いた絵画です。
アンリ・マティス 《夢》 1935年 油彩、カンヴァス ポンピドー・センター / 国立近代美術館(フランス)蔵 購入1979年

東京都美術館「マティス展 Henri Matisse: The Path to Color」
展示風景

東方のエキゾチックな衣装に身を包んだ女性像。これは、マティスの「オダリスク」絵画の第1作となる作品です。
「オダリスク」は、スルタンなどイスラムの君主のハレムで奉仕する女奴隷を指し、アングルやルノワール、マティスなど数多くの画家がオダリスクを題材としました。
アンリ・マティス 《赤いキュロットのオダリスク》 1921年 油彩、カンヴァス ポンピドー・センター / 国立近代美術館(フランス)蔵 国家買い上げ1922年、帰属1923年

フランス・ヴァンス時代のマティスは「ヴァンス室内画シリーズ」を手掛けました。
《黄色と青の室内》はその第1作となり、単純化された背景に、大きな陶製の壺や果物、骨董店で見つけてきたロカイユ様式の肘掛け椅子などが配されています。
アンリ・マティス 《黄色と青の室内》 1946年 油彩、カンヴァス ポンピドゥー・センター/国立近代美術館(フランス)蔵 国家買い上げ1947年、帰属1970年

《赤の大きな室内》は、「ヴァンス室内画シリーズ」の締めくくりとなる作品になります。
アンリ・マティス 《赤の大きな室内》 1948年 油彩、カンヴァス ポンピドゥー・センター/国立近代美術館(フランス)蔵 国家買い上げ1950年、帰属1950年

展示風景

公式図録は本展出品作の油彩35点、デッサン30点、彫刻17点など、合計100点以上を紹介しています。
図録の表紙は《黄色と青の室内》《座るバラ色の裸婦》《金魚鉢のある室内》の3作品から選ぶことができます。(内容は同じです)
A4変型、288ページとかなり厚みがあり、価格は税込3,300円です。
東京都美術館「マティス展 Henri Matisse: The Path to Color」


マティス展 Henri Matisse: The Path to Color」開催概要
開催会場:東京都美術館 企画展示室
開催期間:2023年4月27日(木)~ 8月20日(日)
休室日:月曜日、7月18日(火) ※ただし、5月1日(月)、 7月17日(月・祝)、 8月14日(月)は開室
開館時間:9:30~17:30、 金曜日は20:00まで ※入室は閉室の30分前まで
観覧料金:一般 2,200円  大学生・専門学校生 1,300円  65歳以上 1,500円  高校生以下無料
日時指定予約が必要です。無料扱い、その他割引については公式チケットサイトまで(こちら)。



最後までご覧いただき、ありがとうございました。

「岡本太郎と太陽の鳥」川崎市岡本太郎美術館2023年05月01日 18時59分24秒

1961年に二科会を脱退した2年位前から、岡本太郎は一羽のカラスを飼っていました。その名を「ガア公」といいます。
カラスの高貴な存在感に加え、群棲動物でありながらも おのおのが独立したあり方を、岡本は理想的な生き方と考えていました。自身が集団から離れ、個の芸術家として歩む姿を、群れから離れたガア公に投影していたかもしれません。
鳥には特別な関心を寄せていたという岡本太郎と鳥の関係に着目した展覧会、『岡本太郎と太陽の鳥』が川崎市岡本太郎美術館で開催されています。
川崎市岡本太郎美術館
本展では、収蔵作品の中から、タイトルに鳥を冠する作品や、くちばしや羽のようなものが描きこまれた作品、また画家としての転機でもあったガア公と過ごしたころの作品を展示して、岡本太郎の鳥への関心を考察しています。

展覧会は、
I.   岡本太郎と鳥
II.  ガア公と過ごしたころ―1960年代を中心に―
III. おかえりなさい!!-展覧会岡本太郎から戻った代表作を展示―
の3つの章で構成されています。

1970年の「大阪万国博覧会」で、テーマ館の一部として建造された《太陽の塔》です。
ある時、話の中で岡本太郎は「太陽の塔?あれはカラスだよ」と言ったといいます。(岡本敏子著『太郎さんとカラス)
そういえば、鳥の羽のような腕が伸びていますね。

岡本太郎 《遭遇》 1981年 油彩、キャンヴァス 

岡本太郎 《夢の鳥》 1977年 陶磁

岡本太郎 《夢の鳥》 1951年 油彩、キャンヴァス

展示風景

岡本太郎 《瑞鳥》 1987年 繊維強化プラスチック

展示風景

岡本太郎 《青い風》 1962年 油彩、紙

2022年7月に開幕し、大阪・東京・愛知と巡回した「展覧会 岡本太郎」に出品された、当館所蔵の岡本太郎の代表作も、「第 III 章:おかえりなさい!!」で展示されています。
展示風景

本展も常設展(収蔵作品展)になりますが、いつ行っても展示内容にほとんど変化がない常設展の部屋も4つあります。本展のテーマには沿っていません。

手前の白い立体作品は、母親である岡本かの子の生家に近い、多摩川沿いの二子神社に建てられている「岡本かの子文学碑《誇り》」のミニチュア版です。空に向かって羽ばたき、揺らぎながら登っていくような形をしています。


常設展「岡本太郎と太陽の鳥」開催概要
開催期間:2023年4月20日(木)~7月2日(日)
休館日:月曜日(5月1日を除く)、5月9日
開館時間:9:30~17:00(入館16:30まで)
観覧料金:6月25日(日)までは 一般1,000円、高・大学生・65 歳以上800円、中学生以下は無料
  ※企画展「顕神の夢 ―幻視の表現者― 村山槐多、関根正二から現代まで」とのセット料金
  ※6月27日(火)~7月2日(日)は常設展のみ開催で、一般500円、高・大学生・65 歳以上300円、中学生以下は無料


もうすぐ「こどもの日」ですが、岡本太郎は《TARO鯉》という鯉のぼりも創っています。
TARO賞」を受賞した作家たちがデザインした《TARO鯉》たちも展示されていました。

《TARO鯉》もいろいろなデザインがありますが、白地に赤い鯉の《TARO鯉》手ぬぐいを買ってきました。
330×935ミリの手ぬぐいです。税込1,650円です。家の壁の中を泳いでいます。
5月3日(水・祝)~7日(日)には、美術館の外で子供たちが創った鯉のぼりと一緒に、太郎さんの《TARO鯉》が泳ぎます。(雨天中止)



最後までご覧いただき、ありがとうございました。

奈良原一高『ヨーロッパ・静止した時間』2023年04月18日 11時22分22秒

奈良原一高 初の写真集として1967年に刊行された『ヨーロッパ・静止した時間』(鹿島研究所出版会版)は、1962年に初めて渡欧した奈良原が約3年間におよぶ滞在中に、目の前のヨーロッパを現実の存在としてだけでなく、独自の視点によって日本人の心象風景として捉えた代表作です。
『ヨーロッパ・静止した時間 Where Time Has Stopped』

奈良原 一高(ならはら いっこう、1931年11月3日 - 2020年1月19日)は、様々な撮影技法を駆使して戦後日本の新しい写真表現を開拓した写真家です。本名は楢原一高(ならはら かずたか)です。

『ヨーロッパ・静止した時間』は1967年に刊行され、古書市場でも長らく入手困難だった状況とあわせて、伝説の1冊として写真集史にその名を刻んでいます。
下の写真は、出版55年後の2022年に復刊ドットコムより刊行された新装版 『ヨーロッパ・静止した時間 Where Time Has Stopped』です。
『ヨーロッパ・静止した時間 Where Time Has Stopped』
奈良原一高は私の好きな写真家の一人で、『スペイン・偉大なる午後』(求龍堂, 1969年)、  『ジャパネスク』(毎日新聞社, 1970年)、  『王国』(中央公論社, 1971年)、  『生きる歓び』(毎日新聞社, 1972年)、  『消滅した時間』(朝日新聞社, 1975年)、 『昭和写真・全仕事 series 9 奈良原一高』(朝日新聞社, 1983年)、 『Tokyo,the'50s』(モール, 1996年)は初版本を購入していたのですが、『ヨーロッパ・静止した時間』は復刊を心待ちにしていた写真集です。


東京国立近代美術館では、プリントにこだわった奈良原一高が手元に置いていたプリント制作の基準となるセット約500点の作品群を、その散逸を防ぐために収蔵に尽力してきました。
その中から、1966年に当館で開催された「現代写真の10人」展の出品作でもある『ヨーロッパ・静止した時間』の写真16点と写真集を、「所蔵作品展 MOMATコレクション」の中で展示しています。

展示風景
『ヨーロッパ・静止した時間 Where Time Has Stopped』


奈良原一高 《「ヨーロッパ・静止した時間」より 秘密 ヴェネ ツィア、イタリア》 1965年 (printed c. 1973-75) ゼラチン・シルバー・プリント 奈良原恵子氏寄贈

奈良原一高 《「ヨーロッパ・静止した時間」より 塔 セゴビア、 スペイン》 1963年 (printed c. 1973) ゼラチン・シルバー・プリント 奈良原恵子氏寄贈

奈良原一高 《「ヨーロッパ・静止した時間」より 樹 パリ、フラ ンス》 1965年 (printed c. 1973-75) ゼラチン・シルバー・プリント 奈良原恵子氏寄贈

奈良原一高 《「ヨーロッパ・静止した時間」より 化石 ロンド ン、イギリス》 1965年 (printed c. 1973-75) ゼラチン・シルバー・プリント 奈良原恵子氏寄贈

銀塩写真による黒と白の表現にこだわってきた奈良原一高の初期の作品を、ゼラチン・シルバープリントで観ることができます。


開催会場:東京国立近代美術館本館所蔵品ギャラリー(4F-2F)
  ※奈良原一高『ヨーロッパ・静止した時間』の展示は3F・9室
開催期間:2023年3月17日(金)-2023年5月14日(日)
休館日:月曜日(ただし5月1日、8日は開館)
開館時間:10:00-17:00
  ※毎金曜・土曜および5月2日(火)~7日(日)、5月9日(火)~14日(日)は10:00-20:00
  ※入館は閉館30分前まで
観覧料金:一般 500円  大学生 250円
  ※5時から割引(金曜・土曜 :一般 300円 大学生150円)
  ※高校生以下および18歳未満、65歳以上、「MOMATパスポート」をお持ちの方、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料 {一般以外は要証明)
  ※企画展「重要文化財の秘密」の観覧料で入館当日に限り「所蔵作品展 MOMATコレクション」も観覧できます。



最後までご覧いただき、ありがとうございました。

ブルターニュの光と風 -画家たちを魅了したフランス〈辺境の地〉2023年04月15日 12時15分55秒

昨日アップした、国立西洋美術館で開催されている「憧憬の地 ブルターニュ ― モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷」とは別に、新宿のSOMPO美術館で「ブルターニュの光と風 -画家たちを魅了したフランス〈辺境の地〉」という、フランス・ブルターニュ地方をテーマにした美術展が開催されています。

SOMPO美術館は、2020年に西新宿にある損保ジャパン本社ビルの敷地内に別棟(写真右)を新築し、本社ビル42階から移転オープンしました。

SOMPO美術館は日本で唯一、ゴッホの《ひまわり》を所有しています。

ブルターニュの光と風 -画家たちを魅了したフランス〈辺境の地〉

豊かな自然と独自の文化を持つことで知られるフランス北西部の地、ブルターニュ。
本展は、ブルターニュに魅了された画家たちが描いた作品を通じ、同地の歴史や風景、風俗を幅広く紹介する展覧会です。
ブルターニュの光と風 -画家たちを魅了したフランス〈辺境の地〉
ブルターニュに関する作品を多数所蔵するカンペール美術館(フランス)の所蔵作品を中心に、45作家による約70点の油彩・版画・素描を通じて、フランス〈辺境の地〉ブルターニュの魅力を紹介しています。
ブルターニュの光と風 -画家たちを魅了したフランス〈辺境の地〉

深緑の海や険しい断崖が連なる海岸線、平原と深い森とが織りなす固有の景観、また、そこに暮らす人々の慎ましい生活と敬虔な信仰心は、19世紀初め以来、数多くの画家たちの関心を掻き立ててきました。

本展は、
第1章:ブルターニュの⾵景 − 豊饒な海と⼤地
第2章:ブルターニュに集う画家たち − 印象派からナビ派へ
第3章:新たな眼差し − 多様な表現の探求
と、3つの章で構成されています。


第1章:ブルターニュの⾵景 − 豊饒な海と⼤地

嵐に遭遇して転覆した船体にしがみつき、激しい波と格闘しながら海の犠牲となった我が子に、最後の口づけをする父親を描いています。ブルターニュの厳しい自然と人間との相克を描き出した作品です。
アルフレッド・ギユ  《さらば!》 1892年 油彩/カンヴァス 170×245 cm カンペール美術館蔵

ブルターニュ半島沿岸の島ベル=イルでの自然の猛威が荒々しくも美しく描かれています。
テオドール・ギュダン 《ベル=イル沿岸の暴風雨》 1851年 油彩/カンヴァス 131.5×202.5 cm カンペール美術館蔵

展示風景
素朴な信仰が根付くパンマールにあるサン=ゲノレの浜を背景に、ビグダン地方の伝統衣装をまとった聖母子が描かれています。
リュシアン・レヴィ=デュルメール 《パンマールの聖母》 1896年 油彩/カンヴァス 41×33 cm カンペール美術館蔵

展示風景


第2章:ブルターニュに集う画家たち − 印象派からナビ派へ

1886年にブルターニュのベル=イルで活動をしたクロード・モネが、画業の最初期に生地に近いルエルで描いた作品です。
クロード・モネ 《ルエルの眺め》 1858年 油彩/カンヴァス 46×65cm 丸沼芸術の森(埼⽟県⽴近代美術館に寄託)

スレート葺きの家や起伏のある草地で牛が草を食む、ブルターニュらしい眺めが描かれています。
アンリ・モレ 《ポン=タヴァンの⾵景》 1888-89年 油彩/カンヴァス 39.5×59.5cm カンペール美術館蔵

右側にはブルターニュの伝統衣装姿の二人の子供、左側には靴を履こうと身をかがめる人物が描かれています。ゴーギャンは1886年から1890年にかけて断続的にポン=タヴァンを訪れました。
ポール・ゴーギャン 《ブルターニュの⼦供》 1889年 ⽔彩・パステル/紙 26.3×38.2cm 福島県⽴美術館蔵


第3章:新たな眼差し − 多様な表現の探求

リュシアン・シモンは、ビグダン地方を主な着想源とし、同地の過酷な労働という主題に集中的に取り組みました。決して肥沃とはいえない土地で、人々がジャガイモを掘り、袋に詰め、運搬するという収穫の諸段階が一つの画面に描かれています。
リュシアン・シモン  《じゃがいもの収穫》 1907年 油彩/カンヴァス 102×137 cm カンペール美術館蔵

ブルターニュの伝統衣装を着て佇む女性を描いていて、「トレイスム(格子状技法)」と自身が名付けた独創的な技法を用いています。明瞭な輪郭線で囲った色面に細く規則的な線を刻むことで、形態のボリュームと微妙な色調を創り出そうとしています。
ピエール・ド・ブレ  《ブルターニュの女性》 1940年 油彩/カンヴァス 73×63 cm カンペール美術館蔵 (下は部分)

カンペールで生まれた画家マックス・ジャコブは、故郷カンペールとパリを往復しながら制作を続けました。本作では、コワフ(頭巾)を被る二人の女性が、ドゥアルヌネ近郊の港町を背にポーズをとる姿を描いています。
マックス・ジャコブ 《ふたりのブルターニュの⼥性》 1930年頃 グワッシュ/紙 32×30cm カンペール美術館蔵

フェルディナン・ロワイアン・デュ・ピュイゴドーは、1886年にポン=ダヴァンを訪れ、ゴーギャンらと親交を深めました。1890年から3年間ポン=ダヴァンに住んでいます。
フェルディナン・ロワイアン・デュ・ピュイゴドー 《藁ぶき屋根の家のある風景》 1921年 油彩/カンヴァス 81.5×60.5 cm カンペール美術館蔵

公式図録はB5変形判、171ページで、税込2,500円です。


開催会場:SOMPO美術館(東京都新宿区)
開催期間:2023年3月25日(土)~2023年6月11日(日)
休館日:月曜日
開館時間:午前 10 時~午後 6 時(最終入館は午後 5 時 30 分まで)
観覧料金:一般 1,600(1,500)円、大学生 1,100(1,000)円、高校生以下無料
  ※ ( )内は事前購入料金=期間中当日でも最終日12:00迄購入できます。(日時指定なし)
  ※ 身体障がい者手帳・療育手帳・精神障がい者保健福祉手帳を提示のご本人とその介助者 1 名は無料、 被爆者健康手帳を提示の方はご本人のみ無料

本展は、福島県・福島県立美術館、静岡県・静岡市美術館、愛知県・豊橋市美術博物館へ巡回します。



最後までご覧いただき、ありがとうございました。

憧憬の地 ブルターニュ ― モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷2023年04月14日 18時20分13秒

今、東京では2つの「フランス・ブルターニュ」をテーマにした美術展が開催されています。

そのうちの一つ、上野の国立西洋美術館で開催されている「憧憬の地 ブルターニュ ― モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷」です。

ブルターニュといえばガレットやクレープを思い出しますが、食べ物だけではなく、多くの芸術家たちが活躍しています。

フランスの北西端、大西洋に突き出た半島を核とするブルターニュ地方は、芸術家と縁の深い土地です。他とは異なる文化と美しい風景を持つことから、19世紀から多くの芸術家を世に送り出してきました。
19世紀後半から20世紀はじめにかけ、モネ、ゴーギャンら多くの画家たちがフランス北西端のブルターニュ地方を訪れ、この地を作品に描きとめました。
黒田清輝、藤田嗣治といった日本の画家たちも同時期に渡仏し、パリからブルターニュを訪れています。
憧憬の地 ブルターニュ ― モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷

本展では、国立西洋美術館の「松方コレクション」を含む30ヶ所を超える国内所蔵先と、海外の2館からブルターニュをモティーフにした作品約160点を精選し、各種資料と共に展示しています。
I.  見出されたブルターニュ : 異郷への旅
II.  風土にはぐくまれる感性 : ゴーガン、ポン=タヴェン派と土地の精神
III.  土地に根を下ろす : ブルターニュを見つめ続けた画家たち
IV. 日本発、パリ経由、ブルターニュ行 : 日本出身画家たちのまなざし
の4つの章で構成され、とりわけ多くの画家や版画家たちがブルターニュを目指した19世紀後半から20世紀はじめに着目し、この地の自然や史跡、風俗、歴史などをモティーフとした作品を展覧することで、それぞれの作家がこの「異郷」に何を求め、見出したのかを探っていきます。


I.  見出されたブルターニュ : 異郷への旅

1886年9月から11月にかけてのベリール滞在中、モネは手つかずの自然が残るコート・ソヴァージュの風景を繰り返し描きました。
クロード・モネ  《ポール=ドモワの洞窟》 1886年 油彩/カンヴァス 茨城県近代美術館蔵

クロード・モネ 《嵐のベリール》 1886年 油彩/カンヴァス オルセー美術館(パリ)蔵

1826年にターナーは初めてブルターニュの地を踏みます。ナントへ到着したターナーは、30点余りの鉛筆デッサンに街の景観を写しとりました。ロワール川とナントの街を望む本作は、後年アトリエで制作された水彩画です。
ウィリアム・ターナー 《ナント》 1829年 水彩 ブルターニュ大公城・ナント歴史博物館蔵

展示風景
憧憬の地 ブルターニュ ― モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷
資料も書籍や書簡、絵葉書、旅行トランクなど、数多く展示されています。
憧憬の地 ブルターニュ ― モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷

ミュシャは民族衣装の文様をデザインに転用し、コワフ(頭飾り)を被る女性像の装飾性を最大限に引き出しました。
アルフォンス・ミュシャ  《砂丘のあざみ》 1902年 カラー・リトグラフ  OGATAコレクション


II.  風土にはぐくまれる感性 : ゴーガン、ポン=タヴェン派と土地の精神

1886年、ブルターニュのポン=タヴェンへ赴いたゴーガン(ゴーギャン)はこの地を気に入り、1894年までブルターニュ滞在を繰り返して、制作に取り組みます。
ポール・ゴーギャン 《海辺に立つブルターニュの少女たち》 1889年 油彩/カンヴァス 国立西洋美術館蔵(松方コレクション)

ポール・ゴーギャン 《ブルターニュの農婦たち》 1894年 油彩/カンヴァス オルセー美術館(パリ)蔵

15世紀末から16世紀初めにブルターニュ公国最後の女公にしてフランス王妃ともなったアンヌ・ド・ブルターニュと、若木の植えられた鉢を捧げて彼女に敬意を表す若い騎士の姿が描かれています。
ポール・セリュジエ 《ブルターニュのアンヌ女公への礼賛》 1922年 油彩/カンヴァス ヤマザキマザック美術館蔵  ※展示は5/7(日)まで


III.  土地に根を下ろす : ブルターニュを見つめ続けた画家たち

19世紀末から20世紀初頭にかけ、ブルターニュは保養地としても注目されるようになります。画家たちのなかにも避暑のみならず制作のため、この地を「第二の故郷」とし、絶え間なくこの地を着想の源とした者がいました。
モーリス・ドニ 《花飾りの船》 1921年 油彩/カンヴァス 愛知県美術館蔵


IV. 日本発、パリ経由、ブルターニュ行 : 日本出身画家たちのまなざし

日本における明治後期から大正期にかけて、芸術先進都市パリに留学していた日本人画家・版画家たちもブルターニュという「異郷のなかの異郷」へ足を延ばし、その風景や風俗を画題に作品を制作していました。
黒田清輝 《ブレハの少女》 1891年 油彩/カンヴァス 石橋財団アーティゾン美術館蔵

図録は、本展の出品作の詳細な解説だけでなく、専門家による論文やコラムを通してブルターニュ地方に関する理解をより深めることができます。作家の滞在地がわかるブルターニュ地方の地図や20世紀初頭の様子が伺える当時のポストカードの綴りも収録しています。
A4変形判 274ページで、税込3,000円です。


展覧会名: 憧憬の地 ブルターニュ ― モネ、ゴーガン、黒田清輝らが見た異郷
       La Bretagne, source d’inspiration : regards de peintres français et japonais
開催会場:国立西洋美術館(東京・上野公園)
開催期間:2023年3月18日(土)― 6月11日(日)
休館日:月曜日 ※5月1日(月)は開館
開館時間:9:30~17:30 (毎週金•土曜日は20:00まで)
  ※5月1日(月)、2日(火)、3日(水・祝)、4日(木・祝)は20:00まで開館
  ※入館は閉館の30分前まで
観覧料金:一般 2,100円  大学生 1,500円  高校生 1,100円
  ※中学生以下、心身に障害のある方及び付添者1名は無料。チケット購入・日時指定予約は不要です。直接会場へ。(一般 以外は要証明)
  ※その他詳細は公式チケットサイトへ。


もう一つのブルターニュ、新宿の「SOMPO美術館」で開催されている「ブルターニュの光と風 ― 画家たちを魅了したフランス〈辺境の地〉」についてはまた明日。



最後までご覧いただき、ありがとうございました。

ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ2023年04月10日 18時38分51秒

六本木にある国立新美術館で開催されている「ルーヴル美術館展  愛を描く」とコラボレーションしたメニューが、館内のレストランやカフェで提供されています。

黒川紀章設計による国立新美術館の建物3階にあり、中空に浮かぶように輪を描く「ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ」は、フランスのポール・ボキューズの正統派フランス料理を気軽なスタイルで楽しめるブラッスリーです。
ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ

「ルーブル美術館展 特別コース」をいただきました。
ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ

前菜は、「オマール海老のポッシェ  アスパラガスのピューレ モリーユ添え ニコラ・ランクレ《鳥籠》をイメージして」です。
「ルーヴル美術館展  愛を描く」コラボメニュー
春から初夏にかけて旬を迎えるグリーンアスパラガスとオマール海老の色鮮やかなコンビで、作品に描かれた男女のモチーフを表現しています。
グリーンアスパラガス本来の甘みや香りが凝縮されたまろやかなピューレに、弱火で優しく茹でたオマール海老をのせて、モリーユ(茸)とマデラソースで官能的な味わいに仕上げています。
ミルクの泡、女性の青いドレスを表現した大根のピクルスや帽子のクルトンが、味わいと食感のアクセントになります。


魚料理は、「スズキとホタテのポワレ オレンジとトマトのサラダ オレンジ風味のブールブランソース ドメニキーノ(本名 ドメニコ・ザンピエーリ)《リナルドとアルミーダ》をイメージして」。
「ルーヴル美術館展  愛を描く」コラボメニュー
オレンジ、トマト、オリーブ、ハーブの地中海の香りとカラフルな色彩が印象的な、お魚の一皿です。
スズキとホタテに合わせているのは、柑橘のエッセンスを添えたフランス料理の王道、白ワインベースのブールブランソースです。
男女の間の誘惑が、愛くるしい天使らとともに描かれた作品の世界観を、お皿の上で再現しています。


肉料理は、「牛フィレ肉のグリエ 赤ワインソースとりんごのピューレ ジャガイモのドフィノワとともに ピーテル・ファン・デル・ウェルフ《善悪の知識の木のそばのアダムとエバ》より」。
「ルーヴル美術館展  愛を描く」コラボメニュー
牛フィレ肉とジャガイモのグラタン、赤ワインソースというクラシックなフランス料理に、善悪の知識の木に象徴される「りんご」のテーマをのせた、本コースのメインディッシュです。
りんごの果実味溢れる味わいが、牛肉の旨味とコクをぐっと引き立てます。穏やかな甘みと酸味の効いたりんごのピューレとりんごのキャラメリゼを添えて軽い苦味をプラスし、味わいに立体感を演出しています。


デザートは、「ホワイトチョコのムースとフランボワーズのソルベ ピスタチオ風味のアングレーズソース フランソワ・ブーシェ《アモルの標的》より」。
「ルーヴル美術館展  愛を描く」コラボメニュー
《アモルの標的》という作品の特徴であるロココ様式を代表するような優しく繊細な色遣い、6人のアモル(キューピッド)のそばに色とりどりの花が咲き、甘く優美な「愛」の様相をお皿の上で表現しています。
アモルを表わしたビスキュイ、アモルのシンボルである弓矢とハートのモチーフをホワイトチョコレートのムースにあしらい、愛の誕生を讃える華やかな一皿に仕上がっています。

イメージの基になった絵画の写真と料理の説明が載ったMENUがテーブルに置いてあるので、それを参考にいただくと、イメージが理解できます。
このブログの料理の説明は、ほぼほぼそのMENUからのパクりです。


ポール・ボキューズのロゴが入った、かわいいデミタスカップです。
ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ
反対側は「BRASSERIE PAUL BOCUSE」の文字とサインが入っています。
ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ
このカップとナプキンは販売もしています。買う気が無かったので値段は見ていませんが・・・
コースは税込8,800円でした。

昨日アップした「ルーブル美術館展 愛を描く」のブログはこちら



最後までご覧いただき、ありがとうございました。

ルーヴル美術館展 愛を描く2023年04月09日 17時42分36秒

六本木の国立新美術館で「ルーヴル美術館展 愛を描く」が開催されています。
「LOUVRE」のスペル自体が「LOVE」を描いているという発想、「なるほど」です。

本展は、16世紀から19世紀半ばまで、西洋各国の主要画家の名画によって愛の表現の諸相をひもとく展覧会になっています。西洋社会における様々な愛の概念が絵画芸術にどのように描出されてきたのか、ルーヴル美術館の膨大なコレクションから精選された73点の絵画を通して浮き彫りにしています。

プロローグ:愛の発明
第1章:愛の神のもとに ─ 古代神話における欲望を描く
第2章:キリスト教の神のもとに
第3章:人間のもとに ─ 誘惑の時代
第4章:19世紀フランスの牧歌的恋愛とロマン主義の悲劇
の5つのテーマで構成され、古代ギリシア・ローマとキリスト教という大きな二つの文化における愛の起源、欲望を原動力とする神々や人間の愛、子が親を敬う愛を中心とする親子愛、男女の人間味あふれる愛、牧歌的恋愛物語とロマン主義の特徴である破滅的な愛のテーマなどを、画家たちがどのように絵画表現してきたかを読み取ります。


フランソワ・ジェラール 《アモルとプシュケ》、または《アモルの最初のキスを受けるプシュケ》 1798年 油彩/カンヴァス 186 × 132 cm
若く美しいアモル(キューピッド)がプシュケの額にそっとキスするロマンティックな瞬間が描かれています。当時アモルとプシュケの恋は、プラトン主義の解釈に基づき、神の愛に触れた人間の魂が試練を経て幸せを知る物語と解されていました。
ブシュケの頭の上に蝶が舞っています。「プシュケ」はギリシア語で「蝶」と「魂」を意味する言葉だそうです。


アリ・シェフェール 《ダンテとウェルギリウスの前に現れたフランチェスカ・ダ・リミニとパオロ・マラテスタの亡霊》 1855年 油彩/カンヴァス 171 × 239 cm
14世紀イタリアの詩人ダンテの叙事詩『神曲』は、フランスでは19世紀前半、ロマン主義の時代に流行し、なかでも「地獄篇」に登場するパオロとフランチェスカの悲恋は人気を博しました。


ウジェーヌ・ドラクロワ 《アビドスの花嫁》 1852-1853年頃 油彩/カンヴァス 35.5 × 27.5 cm
ドラクロワは、19世紀フランスのロマン主義を代表する画家です。本作の主題は、イギリスの詩人バイロンが1813年に発表した「アビドスの花嫁」を題材にしています。
オスマン帝国時代、高官の娘ズレイカと、その兄(実は従兄)である海賊の首領セリムの恋仲を死が引き裂く悲恋物語が描かれています。


印象派が生まれた19世紀後半より以前の、宗教や戯曲などを題材にした、サロン調の美しい絵画が並びます。
その頃の絵画は上流階級の人たちが楽しむためのもので、「〇〇は△△を表す。」という法則を知らない者にはなかなか理解し難いものでした。本展ではそれを分かりやすく解説してくれているので、より深く作品を理解することができます。


図録の表紙は、ジャン=オノレ・フラゴナール 《かんぬき》 (1777-1778年頃)と、フランソワ・ジェラール 《アモルとプシュケ》または《アモルの最初のキスを受けるプシュケ》(1798年)です。
全作品の図版・解説と、16~17世紀、18世紀、19世紀、各時代の西洋絵画における愛についての論文が収録されており、読み応えたっぷりの一冊になっています。
A4変型(280×215 mm)287ページで、税込2,800円です。

本展は、京都市京セラ美術館へ巡回します。(2023年6月27日(火)-9月24日(日))


開催会場:国立新美術館 企画展示室1E (東京・六本木)
開催期間:2023年3月1日(水)-6月12日(月)
休館日:毎週火曜日  ※5/2(火)は開館
開館時間:10:00-18:00  ※毎週金・土曜日は20:00まで ※入場は閉館の30分前まで
観覧料金:一般2,100円、大学生1,400円、高校生1,000円
  ※中学生以下無料 ※障害者手帳をご持参の方(付添の方1名含む)は入場無料
  ※一般以外は要証明
チケットについて詳細は公式ページで(こちら)。



最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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