ルノワール×セザンヌ モダンを拓いた2人の巨匠 ― 2025年07月05日 15時54分02秒
東京・丸の内にある三菱一号館美術館。
三菱一号館は1894(明治27)年に三菱が東京・丸の内に建設した初めての洋風事務所建築です。英国人建築家ジョサイア・コンドルによって設計され、全館に19世紀後半の英国で流行したクイーン・アン様式が用いられています。
※クイーン・アン様式とは、英国のアン女王の在位時代(1702~14)のイギリス・ロココ様式を指します。古典的で優美な意匠が特徴的です。
当時は館内に三菱合資会社の銀行部が入っていたほか、事務所として貸し出されていました。 この建物は老朽化のために1968(昭和43)年に解体されましたが、明治期の設計図や解体時の実測図の精査に加え、各種文献、写真、保存部材などに関する詳細な調査が実施され、2010(昭和22)年、同じ地にコンドルの原設計に則って復元されました。
復元後は2010年4月に、三菱一号館美術館として開館しています。
その三菱一号館美術館で、「ルノワール×セザンヌ モダンを拓いた2人の巨匠」展が開催されています。
本展は、フランス、パリのオランジュリー美術館が、 ルノワールとセザンヌという2人の印象派・ポスト印象派の画家に初めて同時にフォーカスし、企画・監修をした世界巡回展です。 ミラノ、マルティニ(スイス)、香港を経て日本にやってきました。日本では当館のみの開催になります。
本展では、オランジュリー美術館所蔵作品を中心に、パリのオルセー美術館所蔵作品も含めた52点の作品により、2人の関係から、ふたりに影響を受けたパブロ・ピカソといった後に続く芸術家の作品も展示することで、後世に与えた影響についても紹介しています。
職人の息子として生まれ、明るく社交的な性格だったルノワールと、銀行家の裕福な家庭に生まれ、人付き合いをあまり好まなかったセザンヌ。出自や性格も異なる2人ですが、実は南フランスの地でともに制作し、家族ぐるみの付き合いがありました。
左:ピエール=オーギュスト・ルノワール Pierre-Auguste Renoir, 1841-1919
右:ポール・セザンヌ Paul Cézanne, 1839-1906
モネやドガらと並ぶ「印象派」の代表画家ルノワールは、にじむようなタッチと柔らかい色彩の画風でよく知られています。一方セザンヌは、対象を幾何学的な形で捉える斬新な表現で抽象絵画の誕生に影響を与えました。
2人の画家は、1874年の第1回印象派展に共に出品しています。しかし、印象派の方向性に違いを感じ、次第に別の道を歩むようになりました。作風に違いはありながらも、2人はその後も深い親交で結ばれていました。
展示風景
平日の開館直後でありながら、会場には多くの人が訪れていました。
2人がそれぞれ、花、静物、風景、肖像画を描いた作品を観ながら、作風の違いを比べることが出来ます。
ピエール=オーギュスト・ルノワール 《チューリップ》 1905年頃 油彩、カンヴァス 44×37 cm オランジュリー美術館
ポール・セザンヌ 《花と果物》 1880年頃 油彩、カンヴァス 35×21 cm オランジュリー美術館
ピエール=オーギュスト・ルノワール 《桃》 1881年 油彩、カンヴァス 38×47cm オランジュリー美術館
ポール・セザンヌ 《わらひもを巻いた壺、砂糖壺とりんご》 1890-1894年 油彩、カンヴァス 36×46cm オランジュリー美術館
ピエール=オーギュスト・ルノワール 《セーヌ川のはしけ》 1869年頃 油彩、カンヴァス 47×64.5 cm オルセー美術館
ピエール=オーギュスト・ルノワール 《海景、ガーンジー島》 1883年 油彩、カンヴァス 46×56cm オルセー美術館
ポール・セザンヌ 《田舎道、オーヴェール=シュル=オワーズ》 1872-1873年 油彩、カンヴァス 46×55.3cm オルセー美術館
ピエール=オーギュスト・ルノワール 《長い髪の浴女》 1895年頃 油彩、カンヴァス 82×65cm オランジュリー美術館
1901年生まれ、ルノワールの3男クロードを描いた作品です。
ピエール=オーギュスト・ルノワール 《遊ぶクロード・ルノワール》 1905年頃 油彩、カンヴァス 46×55cm オランジュリー美術館
セザンヌは、妻オルタンス・フィケに室内でポーズをとらせた肖像画を多く制作しました。
ポール・セザンヌ 《セザンヌ夫人の肖像》 1885-1895年 油彩、カンヴァス 81×65cm オランジュリー美術館
日本会場オリジナル図録です。
フルカラーで全出品作品を掲載し、全点の作品解説やオランジュリー美術館の本展監修学芸員、日本側担当学芸員による論文等も充実しています。
モダンを拓いた2人の巨匠、ルノワールとセザンヌの交流や作風の対比を視覚的に表現したピンクとブルーのコントラストが美しい表紙です。
B5サイズ(250×188㎜)、216ページ 発行:日本経済新聞社 3,500円(税込)
「ルノワール×セザンヌ モダンを拓いた2人の巨匠」開催概要
開催会場:三菱一号館美術館
開催期間:2025年5月29日(木)~9月7日(日)
休館日:月曜日 ※祝日の場合、トークフリーデー(7月28日、8月25日)、9月1日は開館
開館時間:10:00-18:00 (祝日を除く金曜日と第2水曜日、9月1日~9月7日は20時まで)
【夏の特別夜間開館】8月の毎週土曜日も20時まで開館 ※入館は閉館の30分前まで
観覧料: 一般 2,500円 大学生 1,500円 高校生 1,300円 中学生以下 無料
毎月第2水曜日「マジックアワーチケット」 1,800円 ※当日の17時以降に当館チケット窓口でのみ販売。他の割引との併用不可。
※障害者手帳をお持ちの方は半額、付添の方1名まで無料
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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