御岳渓谷の旅館建物室礼美術館「河鹿園」 ― 2023年11月26日 15時43分35秒
御岳渓谷の旅館建物室礼美術館「河鹿園」に行ってきました。
河鹿園は、大正の終わりから昭和初期にかけて粋な意匠を凝らして建てられた料亭旅館です。
2017年に旅館としての営業を終え、現在は日本画や書画のギャラリーとして一般に公開されています。
河鹿園は多摩川の流れを見下ろす小高い位置にあり、建物全体が2020年に国登録有形文化財として登録されました。
旅館建物 室礼 美術館の「室礼」とは、ご先祖様やお客様・季節の収穫に感謝の気持ちを込めて室内に装飾を施すことをいいます。「しつれい」と読むのは失礼で、「しつらい」と読みます。
各客室ごとに季節の室礼とともに書画や茶花を展示し、風情のある美術館として御岳渓谷の人気アートスポットとなっています。
御岳に住んでいた川合玉堂をはじめとする著名な画家や書家の貴重な作品を、ガラスケースの中に飾るわけでもなく、じかに見ることが出来る貴重な美術館です。 写真撮影も、「ご自由に撮ってください。」と、なんとおおらかなことか。
館内には旅館時代の部屋がそのまま残されていて、今は各部屋で「玉堂翁尽くし展」という展示を行っています。(11月15日~12月17日)
川合玉堂は1873年(明治6年)11月24日生まれで、一昨日生誕150年を迎えました。
太平洋戦争中の1944年(昭和19年)に御岳に疎開した川合玉堂が河鹿園に大変世話になったという関係から、多くの玉堂作品がこの河鹿園に残されています。
川合玉堂 《鶺鴒》 1956年
描かれているのはセグロセキレイ(背黒鶺鴒)と紅葉です。
以前はこの多摩川の川面を、多くのセグロセキレイやキセキレイが飛んでいたということです。
御岳渓谷遊歩道を歩いて河鹿園に来る途中、キセキレイ(黄鶺鴒)を見かけました。
多摩川向こう岸にある「玉堂美術館」前の、大きなイチョウの木が室内から見えます。
川合玉堂 《秋山渓声》 1921年頃
1944年から御岳に疎開した玉堂は、住居を「愚庵(ぐあん)」、画室を「随軒(ずいけん)」と称し、その地を終の棲家としました。晩年は「愚庵」を別名として用いています。
川合玉堂 《湖畔新雪》
琵琶湖の長浜あたりを描いたものだといいます。生活する人々の姿が小さくも生き生きと描かれています。
旅館の浴場入口。男湯の暖簾です。左が女湯になります。
秋のこの季節は紅葉がきれいで、一番良い季節だと言われます。
例年はモミジの紅葉が見頃になるころには玉堂美術館のイチョウは散ってしまっているのですが、今年はイチョウの黄葉が遅かったので見頃がうまく重なりました。
川合玉堂 《喜寿》
川合玉堂が喜寿を迎えた記念の作品です。
御主人が筆で手書きした解説がそれぞれの画の横に付されています。ユーモアあふれる解説も多く、見入ってしまいます。
『 思わぬところに喜寿のしるしが隠してあります さて 』
分かりましたか・・・? 喜寿は77歳のお祝いです。
大広間の展示室には数多くの美術品が並べられています。
川合玉堂 《白衣観音》
川合玉堂 《一筆寶珠》 (一筆宝珠)

川合玉堂の元旦試筆(書初め)は毎年「一筆宝珠」で始まったといいます。亡くなる1年前、83歳の書です。
障子の桟(さん)で表現しているのは「三保の松原」だそうです。すべての部屋がそれぞれ趣のある造りになっています。
ダイヤル式の黒電話、懐かしいですね。
建物で最も古いのは帳場兼主屋で1925(大正14)年ごろの建築であり、保存と運営は財政的にも苦しく、運営資金を稼ぐために旅館時代に使っていた調度品や趣味の品を館内の「我楽多市(がらくたいち)」で販売しているということです。
皆さま、お立ち寄りの節には来館記念に買ってあげてくださいませ。値段も“かなりお買い得”だと思います。
御主人のお話によると癌を患われたということで、今年4月16日をもって休館していました。
ステージ4の癌でしたが幸い抗がん剤の相性が良くて回復し、医者の許可を得て美術館を再開することができたということです。
いつまでも、いつまでも元気で過ごしていただきたいと思います。
旅館建物室礼美術館 河鹿園
住所: 東京都青梅市御岳本町335 (JR御岳駅から徒歩約1分)
定休日:月曜日、火曜日 (企画展示期間中)
開園時間:11:00-16:00 (企画展示期間中)
入館料:一般 800円 学生 400円 一日ごゆっくり券1200円(お飲み物付・再入場可)コメント
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