マリー・ローランサン ― 時代をうつす眼 ― 2023年12月24日 17時57分31秒
パリで生まれた画家であり、彫刻家でもあるマリー・ローランサンの魅力に迫る展覧会、「マリー・ローランサン ― 時代をうつす眼」が東京・京橋のアーティゾン美術館で開催されています。
本展ではアーティゾン美術館が所有する石橋財団コレクションや国内外の美術館から、ローランサンの作品約40点、挿絵本等の資料約25点に加えて、ローランサンと同時代に活躍した画家たちの作品約25点、合計約90点を展示しています。
マリー・ローランサン(Marie Laurencin, 1883年10月31日 - 1956年6月8日)は、フランスのパリで生まれ、画家を志してパリのモンマルトルにある美術学校「アカデミー・アンベール」で絵画を勉強しました。ジョルジュ・ブラックやパブロ・ピカソらと同時代に影響し合い活躍し、キュビズムの画家とも言われますが、彼らの様式を模倣することなく、パステルカラーの独自の画風を生み出しています。
女性画家が活躍することが容易ではなかった20世紀前半に、「前衛的な芸術運動」や「流派(イズム)」を中心に語る美術史の中にうまく収まらない存在として、独特で確かな足跡を残しました。
展覧会は、
序章: マリー・ローランサンと出会う
第1章: マリー・ローランサンとキュビスム
第2章: マリー・ローランサンと文学
第3章: マリー・ローランサンと人物画
第4章: マリー・ローランサンと舞台芸術
第5章: マリー・ローランサンと静物画
終章: マリー・ローランサンと芸術
の7つの章で構成され、ピカソやブラックなどと交流した初期の作品から72歳で亡くなる3年前 までの作品に、ピカソやブラック、モディリアーニ、藤田嗣治ら同時代の画家の作品などを交えて、第一次世界大戦や第二次世界大戦をはさみ激動の時代に生きたローランサンの「時代をうつす眼」を追っていきます。
[ 序章: マリー・ローランサンと出会う ]
序章では、1904年から1927年までの自画像4点が並べられています。
自画像を通して、多くの画家の影響を受けつつも、独自の作風を確立していく様子をうかがうことができます。 展示風景
マリー・ローランサン 《自画像》 1904年 油彩・板 40.0×30.0cm マリー・ローランサン美術館蔵
マリー・ローランサン 《帽子をかぶった自画像》 1927年頃 油彩・カンヴァス 41.4×33.5cm マリー・ローランサン美術館蔵
[ 第1章: マリー・ローランサンとキュビスム ]
第1章では、ピカソやブラックと交流を深め、キュビズムの画家たちの影響を受けた初期の作品に並んで、キュビズムの画家たちの作品が展示されています。
マリー・ローランサン 《パブロ・ピカソ》 1908年頃 油彩・カンヴァス 41.0×32.9cm マリー・ローランサン美術館蔵
マリー・ローランサン 《ブルドッグを抱いた女》 1914年 油彩・カンヴァス 92.0×73.0cm 群馬県立近代美術館蔵
[ 第2章: マリー・ローランサンと文学 ]
ローランサンは多くの詩人との交流があり、自身も詩を書きました。1920年以降、ローランサンは挿絵の仕事にも力を入れ始めます。
展示風景
[ 第3章: マリー・ローランサンと人物画 ]
ローランサンは生涯にわたって人物画を多数描きましたが、その作風は時代によって変化しています。
同じく1920年代のパリの社交界で人気のあったドンゲンやモディリアーニ、藤田嗣治らの作品も並びます。
展示風景
パリの上流婦人の間ではローランサンに肖像画を注文することが流行となったといい、当時成功していたココ・シャネルも、ローランサンに肖像画を依頼しました。シャネルはこの絵を気に入らず、現在はパリのオランジュリー美術館が所蔵しています。
下のシャネルを描いた作品は「Bunkamura ザ・ミュージアム」で開催された「マリー・ローランサンとモード」展で撮影したものです。本展には出品されていません。
マリー・ローランサン 《マドモアゼル・シャネルの肖像》 1923年 油彩、カンヴァス 92.0×73.0cm オランジュリー美術館蔵
マリー・ローランサン 《女優たち》 1927年頃 油彩・カンヴァス 91.9×72.6cm ポーラ美術館蔵
[ 第4章: マリー・ローランサンと舞台芸術 ]
ローランサンは舞台衣装や舞台装置も多く手掛けています。
ジャン・コクトーが台本を書いたバレー『牡鹿』でもローランサンが舞台衣装や舞台装置を担当しました。
マリー・ローランサン 《牝鹿と二人の女》 1923年 油彩・カンヴァス 73.0×54.0cm ひろしま美術館蔵
マリー・ローランサン 《舞台装置》 1928年 水彩・紙 44.3×98.8cm マリー・ローランサン美術館蔵
[ 第5章: マリー・ローランサンと静物画 ]
キュビズムの画家たちは静物画を描くことで多くの絵画的実験を行いました。
人物画で知られるローランサンですが、生涯を通じて静物画も制作しました。1906年から08年にかけて、花を生けた花瓶を数多く描いています。
マリー・ローランサン 《花を生けた花瓶》 1950年頃 油彩・カンヴァス 49.5×35.5cm マリー・ローランサン美術館蔵
アンドレ・グルー(デザイン)、 マリー・ローランサン(絵付)、 アドルフ・シャノー(制作) 《椅子》(2脚) 1924年 黒檀、鼈甲、 ファブリック(ボーヴェ 織物工房)、真鍮 H91.0×W54.0× D46.0cm 東京都庭園美術館蔵
[ 終章: マリー・ローランサンと芸術 ]
ローランサンは同時代の芸術家たちと交流を持っていたものの、ある特定の流派に属するのではなく、パステルカラーの色彩を用いた独自の作風を創り上げました。
このコーナーでは同時期に活躍し、影響を受けたたピカソ、ブラック、セザンヌ、ドランなどの作品も展示されています。
展示風景
マリー・ローランサン 《五人の奏者》 1935年 油彩・カンヴァス 81.0×100.0cm 吉野石膏コレクション(山形美術館寄託)
晩年のローランサンは養女シュザンヌ・モローと二人で世間から離れ、静かな日々を送り、72歳で亡くなるまで絵を描き続けました。この作品は、10年近い年月をかけて完成させた晩年の大作で、赤や黄色などの鮮やかな色も使われ、画家の愛したモティーフや色彩が盛り込まれています。
マリー・ローランサン 《三人の若い女》 1953年頃 油彩・カンヴァス 97.3×131.0cm マリー・ローランサン美術館蔵
図録はB5判、本文174頁、税込2,200円で、出品作品の図版に加え、論考、年譜、参考文献、展覧会歴など、資料としても充実しています。
左:《二人の少女》1923年 右:《プリンセス達》1928年
「マリー・ローランサン ― 時代をうつす眼」開催概要
開催会場:アーティゾン美術館 6階展示室
開催期間:2023年12月9日[土]− 2024年3月3日[日]
休館日: 月曜日(1月8日、2月12日は開館)、12月28日−1月3日、1月9日、2月13日
開館時間:10:00 ー 18:00(2月23日を除く金曜日は20:00まで)※入館は閉館の30分前まで
観覧料金:一般 WEB予約=1,800円*クレジット決済のみ 窓口販売=2,000円
大学生 / 専門学校生 / 高校生 無料 要ウェブ予約 ※要学生証か生徒手帳提示
中学生以下 無料 予約不要
障がい者手帳をお持ちの方と付き添いの方1名は無料 予約不要 ※要障がい者手帳提示
この料金で同時開催の展覧会を全て観覧できます。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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