「ブランクーシ 本質を象る」アーティゾン美術館 ― 2024年06月15日 14時43分25秒
中央区京橋のアーティゾン美術館で開催されている「ブランクーシ 本質を象る」に行ってきました。
コンスタンティン・ブランクーシ(Constantin Brâncuşi, 1876年 - 1957年)は、ルーマニア出身の20世紀を代表する独創的な彫刻家です。
本展は、ブランクーシ展として日本の美術館では初の開催となります。初期から後半期まで、彫刻作品、絵画、素描、写真など計79点のブランクーシ作品が国内外から集結しました。関連作家の作品10点を加えた全89点と、資料、映像が展示されています。
ブランクーシの肖像 1933-34年頃 ゼラチン・シルバー・プリント 11.7×22.3cm 東京都写真美術館蔵
ブランクーシはルーマニアのホビツァに生まれ、1904年にパリに出てブカレスト国立美術学校に学んだ後、1907年、憧れのロダンのアトリエに助手として招き入れられました。しかし、一ヶ月ほどでロダンの元を離れ、独自に創作に取り組み始めます。
美術学校の時期の作品《プライド》は、モデルの顔立ちの明瞭な表現に、アカデミックな様式がうかがえます。
コンスタンティン・ブランクーシ 《プライド》 1905年 ブロンズ 31.0×20.0×21.0cm 光ミュージアム蔵
ロダンの彫刻制作が粘土による塑造が中心で、彫造についても分業制であったことに対する反発からか、ブランクーシは石の塊からフォルムを彫り出す、直彫りの技法で作品を制作するようになります。
下の作品は1907年に制作された石の作品をもとに、1910年までに石膏で制作されたものです。
コンスタンティン・ブランクーシ 《接吻》 1907-10年 石膏 高さ28cm 石橋財団アーティゾン美術館蔵
表面に外形の特徴をとどめつつ、その内部に思念や夢想の観念を想起させる卵形の頭部は、次第に生命や誕生のシンボルとして、抽象性を高めていきます。
コンスタンティン・ブランクーシ 《ミューズ》 1919年(2016年鋳造) 磨かれたブロンズ 43.5×24.0×15.9cm ブランクーシ・エステート蔵
パリに出て間もない時期に造形への関心を共有したモディリアーニ、キュレーターおよびエージェントとしてブランクーシのアメリカでの受容に尽力したデュシャン、そして、短期間ながら助手としてブランクーシのもとで直彫りを学んだイサム・ノグチなど、時々で他の芸術家との間で関係を結んでいます。
アメヂオモディリアーニ 《若い農夫》1918年頃 油彩、カンヴァス 73.4×50.3cm 石橋財団アーティゾン美術館蔵
イサム・ノグチ 《魚の顔 No.2》 1983年 玄武岩 高さ36.0cm 石橋財団アーティゾン美術館蔵
ブランクーシは、ブカレストの国立美術学校に在学中に既にアトリエの様子をとらえた写真を残しています。撮影の対象は基本的に自身の作品で、写真を再現的なメディアとして用いるのではなく、自らの彫刻の潜在的な側面を引き出すための、いわば再解釈のツールとして位置づけていたようです。
展示風景
ルーマニア伝承の民話を出発点とする鳥の主題は、ブランクーシにおいて自由と上昇の観念と関わるものです。そこに、同時代の産業技術の粋たる航空機への関心が結びつき、1920年~30年代にかけて発展を遂げていきます。
コンスタンティン・ブランクーシ 《レダ》 1926年(2016年鋳造) 磨かれたブロンズ 53.0×70.0×25.0cm ブランクーシ・エステート蔵
コンスタンティン・ブランクーシ 《雄鶏》 1924年(1972年鋳造) ブロンズ 92.4×10.5×45.0cm 豊田市美術館蔵
《空間の鳥》のしなやかに円弧を描く美しいフォルムは、まさに空間を切り裂くようで、天空を志向する飛翔の運動自体に焦点が当てられているようです。
コンスタンティン・ブランクーシ 《空間の鳥》 1926年 (1982年鋳造) ブロンズ、大理石(円筒形台座)、石灰岩(十字形台座) ブロンズから十字型台座まで132.4×35.5×35.5cm 横浜美術館蔵
図録はA4変形/本文152ページ/上製本 題箋貼りで、税込2,420円です。約90点の展示作品全てと、キュレーターによる論考などが掲載されています。
「ブランクーシ 本質を象る」開催概要
開催会場:アーティゾン美術館 6 階展示室
開催期間:2024年3月30日[土] - 7月7日[日]
休館日:月曜日
開館時間:10:00 - 18:00(金曜日は20:00まで) *入館は閉館の30分前まで
観覧料金:一般 1,800円(Web予約) 2,000円(窓口)
※大学生以下は無料ですが高校・専門学校・大学生は要予約
※詳細はチケットのサイトへ(こちら)
※本展のチケットで同時開催の展覧会も全て鑑賞できます
同時開催:石橋財団コレクション選 特集コーナー展示 清水多嘉示
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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